たばこと塩の博物館

 渋谷まで来たよー。





 江戸時代、日本人が海外へ渡航することは禁じられていました。しかし、海外とつながる扉が完全に閉ざされていたわけではなく、長崎出島などにおける交易を通じ、異国の文物や情報は常にもたらされていました。
 オランダ渡りの金唐革(きんからかわ)やインドの更紗(さらさ)などがたばこ入れをはじめとした小物に細工され、異国の情景を描いた陶磁器や、ガラス器も用いられていました。また、江戸の庶民向けの読み物にもアルファベットがさりげなく入れられ、浮世絵にも、洋風表現を用いたものや油絵を意識したもの、ヨーロッパの絵画や版画に取材したものが多く見られます。ラクダやゾウなどの異国船で運ばれてきた動物たちが、見世物にもなりました。このように、江戸時代の人々は、意外なほどにさまざまな形で異国の文化や風習に触れていたのです。
 そして、当時は、オランダ語を習得し、西洋の学問を本格的に学ぶ研究者、蘭学者たちがいました。大槻玄沢(おおつきげんたく)は、江戸時代を代表する蘭学者でしたが、その玄沢を中心とする蘭学者たちのグループは、過去に書かれた和書・漢籍・洋書の中からたばこに関する記述を集め、たばこの起源、異名、栽培、名品、加工、薬用、害、解毒法、喫煙具、文芸作品などの項目について考証し、たばこの研究書『蔫録(えんろく)』をまとめました。たばこと塩の博物館は、天明(1781〜1789)末頃にまとめられた『蔫録』の草稿本を所蔵していますが、実は『蔫録』は、最初の草稿が書かれてから出版されるまでの間、一度は公的な出版が不許可となり、加筆訂正が行われ、文化6年(1809)に私家版という形で版行されるという経過を辿りました。約20年にわたり繰り返し推敲され、ようやく出版された『蔫録』からは、大槻玄沢をはじめとした蘭学者たちの熱意と努力、そして、たばこという嗜好品に対しての強いこだわりを感じることができます。
 この展示では、江戸時代の人々が触れた異国情緒にあふれる文物、浮世絵を展示します。さらに、版行から200年を迎える『蔫録』に注目し、蘭学者たちのたばこ研究について取り上げます。江戸時代ならではの、さまざまな形での異国文化の楽しみ方、味わい方をご紹介します。

http://www.jti.co.jp/Culture/museum/tokubetu/0812_event/index.html

2008年12月13日(土)
「おらんだの楽しみ方〜展示作品の魅力〜」 湯浅淑子(たばこと塩の博物館学芸員

12月21日(日)
「ABCD(あべせで)の魅惑」 岩崎均史たばこと塩の博物館主席学芸員

2009年1月10日(土)
「大江戸異人往来」 タイモン・スクリーチロンドン大学教授)

1月11日(日)
「見世物と異国」 川添裕皇學館大学教授)

1月12日(月・祝)
「異国への憧れ〜江戸時代オランダ船は何を持ってきたのか〜」 石田千尋(鶴見大学教授)

1月24日(土)
「浮世絵に見る洋風表現」 岩切友里子(浮世絵研究家)

1月25日(日)
「描かれた出島の召使いたち」 イサベル・ファンダーレン(財団法人日蘭学会 渉外・学芸担当)

 講演会。18世紀半ばころから浮世絵にもオランダ絵画の影響がみられ、遠近法が取り入れられるとか。
 多くの浮世絵にオランダ絵画のモチーフが存在しているのにびっくり。鎖国なんてのはうそっぱちだね。
 いつの世も好奇心や探究心、向上心を持つ人はいたし、どうしたってそれらを止めることなどできやしない。
 オランダ正月や杉田玄白の絵をじっくり見てきたよ。