先生は生徒守ります

電車で帰宅。乗る前に本屋で一冊。

公務員教師にダメ出しを! (ちくま新書)

公務員教師にダメ出しを! (ちくま新書)

 電車の中でだいたい読みとおしたんだけど、びっくりしたのが「ダメ校長」の例。 
 「水からの伝言」と「水は答えを知っている」を校長講話や家庭に配布する校長室だよりのネタに使った校長の話。「『ありがとう』を見せると氷の形が綺麗になる」んだとか。
 理科の先生はなんか変だとか思わなかったんだろうか。正しい言葉づかいを教えたいにしても、ウソを教えてはいけないだろうに。
 もう一件似た話が載っていて、「二つの瓶にご飯を入れ、それぞれ『バカ』と『ありがとう』という紙を貼っておくと、『バカ』のほうが早くカビが生えるそうです。バカなどという言葉をつかってはいけません」と小学校教師が言うと、男子児童が「バカの瓶には唾がかかったんじゃないの」と答えたら、「関係な話をするな」と叱られたという。(出典はメディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)らしい)
 少なくとも近代の公立学校は「科学」と「合理」に基づいていなければならない。もちろん、先生と生徒、生徒同士のルールやマナー、モラルは守らなければならないが、これはあまりにひどい。
 目的は善意や誠意に基づくものなのかもしれないが、かえってややこしいことに。
 これを読んでいろいろ思い出したよ。

(1)「奇跡の詩人」騒動
  障害者の少年が母親の力をかりて高度な内容を語るというもの。知人がメディア論から研究していた。
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%87%E8%B7%A1%E3%81%AE%E8%A9%A9%E4%BA%BA
(2)マイナスイオン事件
  数年前、ヨドバシカメラマイナスイオン機能付きと付いていないハロゲンヒーターがそれぞれ売っていて、値段は1000円違い。店員に「マイナスイオンが出るとどう健康にいいのか文系の自分に分かるように説明してくれ」とたずねたら、「気分の違いですね」と一言。マイナスイオン付きのを買ってやったよ。
(3)もう一個マイナスイオン事件
  知人女性と話していて、「マイナスイオンて健康によくて、気持ちいいいよね。毎日浴びているよ」と彼女が一言。「そんなバカな。科学的根拠を示せ」と言ったら、「あるある大事典でやっていたから」の一点張り。彼女はマイナスイオンの気持ちよさを体感できるらしい。自分は「他人に食ってかかる挙げ足ばかりとる性格の悪い奴」というレッテルを貼られそうになったよ。当該番組の終了後、彼女がどうしてるかは知らない。
(4)自分が小学生のとき
  担任教師が「江戸時代に杉田玄白前野良沢という人が『ターヘル・アナトミア』という本を訳しました。辞書を引きながら大変だったんでしょうね」と一言。
  自分が「その頃にはまだまとまった蘭和辞典はなかったはずだが。」と注意したら、ヒステリーを起こされた。
  (日本最初の蘭和辞典である波留麻和解の編纂は1796年で、解体新書の刊行は1774年。)

 友人同士や師弟であっても、最低限の合理的な筋は通すべき。そうして初めて友情や師弟関係が成り立つんじゃなかろうか。間違っていることは間違っているというのが友情だし、正しい知識や技術を一生懸命指導していれば教え子もついてくるだろう。商品やサービスを正しい科学的説明に基づいて提供していれば客もつくだろう。慣れ合いは嫌いです。こういうこと言うから自分は嫌われるんだろうか。