茶織 

「かわいい」って何? 変わる美のバロメーター 個性の時代


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「かわいい服」というコンセプトでの品ぞろえは、派手なヒョウ柄のストールやダルメシアン柄のカットソー、セクシーなデニムのホットパンツ=東京都渋谷区道元坂のセシルマクビー渋谷109店

 ■年齢・他人の目、縛られず

 最近、気に入ったものを見て開口一番、「かわいい!」と発する人が周囲に結構いませんか。一般的には幼児や若い女性、ペットなど小さくて弱いものに向けて使われることが多いが、今やこの言葉が持つイメージは大きく変わってきた。そんな現代版の「かわいい」商品を求めるのは、何も若い女性に限らなくなっている。「かわいい」の最新事情を探った。(小川真由美

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 ≪「その日の気分」≫

 日本を代表するカジュアルファッションブランド「セシルマクビー」は、若者が集まる東京・渋谷のファッションビル「渋谷109」内のナンバーワン店だ。同店を運営し、計8ブランドを展開するジャパンイマジネーション(東京都中野区)の年間売上高230億円の多くは、セシルマクビーが稼ぎ出している。

 コンセプトは「男性にも女性にも愛されるかわいい服」。だが、太ももが出るくらい丈が短いスカート、ピンクと黒の色の組み合わせやヒョウ柄など、かわいいというよりは、派手な印象が強い。同ブランドは20〜22歳の若い女性をターゲットにしているが、顧客には30、40代の女性も多い。

 デザインは、21〜27歳の6人の女性社員で1カ月平均100以上を手がける。「かわいい」の判断基準は、人気モデルのブログや接客で得た情報。ディレクターの名越万理さんは「かわいい=(イコール)その日の気分」だという。逆に最もかわいくない服は、「少し前にはやって、今ははやっていないデザイン」と話す。

 ≪新鮮なお姫さま系≫

 「かわいい」の“高齢化”は百貨店にもみられる。

 伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)は今年9月、地下2階の全1000平方メートルと本館2階の一部で「イセタン ガール」を開業した。照準はずばり、「旬の『カワイイ』を自分で見つけ出して楽しむ18〜22歳の女子学生親子」。この世代の娘と母親は時間や価値観を共有する傾向があることを意識したという。服や雑貨のほか、サロンを併設した化粧品売り場も新設した。

 銀座三越中央区)の2階で、国内外のモード系の服を展開する「ニューヨークランウェイ」では2〜3年前から、フリルやリボン、レースなどの装飾が施されたワンピース、花柄やチャーム柄の入ったデニムが30、40代の女性に好評だという。

 「モード、エレガンスなど一通りおしゃれを楽しんだ世代から、甘めのテイストが見直されているのでは」と話すのは商品担当の高橋紀子さん。バブル期にデザイナーズブランドやヨーロッパの高級ブランドを楽しんだこの世代には“お姫さま系”が新鮮に見えている、というのだ。

 ただ、若い世代が求める「かわいい服」とは決定的に違う。それは、良質な素材やデザインが前提にあること。ファッション誌には「大人かわいい」という言葉が飛び交う。

 ≪スカルもヒョウ柄も≫

 こぢんまりとした洋服店や雑貨店が集まる東京・原宿の裏通り、通称「裏原宿」にある「YELLOW96」。店のコンセプトは「どんな年齢層にも『かわいい』と絶賛される店」というが、サイズやデザインは決してオーソドックスではなく、丈が短めのワンピースや細身のパンツばかりが並ぶ。にもかかわらず、最近は30代以上や子連れの女性客が増えたという。

 同店デザイナーの小山内京子さんは「昔は奇抜なデザインは一部の人にしか受けなかったが、今はスカル(ドクロ)やヒョウ柄など強烈なデザインも、着る人が『かわいい』と思えば似合うかどうかは別に、まず着てしまう。年齢や他人の目に縛られず、自分の好きな格好ができる時代になったからではないか」と、顧客の年齢層が広がる背景に「個性の時代」があるとみている。

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【かわいい】 『広辞苑』(岩波書店)によると、(1)いたわしい、ふびんだ、かわいそうだ(2)愛すべきである、深い愛情を感じる(3)小さくて美しい│の意味がある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081015-00000512-san-soci

 なんでも「かわいい」とか「すごい」とか「やばい」で済むのかねえ。