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あなたが話すときに従っている文法の規則は、あなたの思考の筋道を反映していないかもしれない。

6月30日(米国時間)に『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)に発表された論文によると、主語(S)、動詞(V)、目的語(O)の順に文章が構成される(例えば「Bill eats cake(ビルが、食べる、ケーキを)」)SVO型言語を話す人であっても、身ぶり手ぶりでコミュニケーションを取るよう求めると、主語、目的語、動詞の順番で意志を伝えたという。

英語も含めて、人間が使用する言語の約半分では、主語の後に動詞が続く。こうした言語を生まれたときから使用している人には、「Bill cake eats(ビルが、ケーキを、食べる)」というSOV型の語順の文は、直観に反しているように聞こえるかもしれない。だが、こうした文章構成の方が、実は人が認識する順番に従っているようなのだ。

「これは、言語よりも先に頭に浮かぶ、本来の思考の順番を反映しているのかもしれない。非常に自然であるように思われる」と、今回の論文の執筆者の1人であるシカゴ大学の心理学者、Susan Goldin-Meadow氏は語る。

Goldin-Meadow氏の研究チームは、40人の被験者(SVO型である英語、中国標準語、スペイン語を母国語とする被験者各10人と、SOV型であるトルコ語を母国語とする被験者10人)に、「少女がノブを回す」といった一連の単純な行為を身振り手振りで表すよう求めた。

その結果、母国語に関係なく、ほとんどすべての被験者が、主語(少女が)、目的語(ノブを)、動詞(回す)の順に身振り手振りを行なった。

「話す言語が身ぶり言語にも影響すると予想したが、結果は違った」とGoldin-Meadow氏は言う。

主語、目的語、動詞の語順にしたのは意思の伝達をスムーズにしようとしたためであるどうかをテストするために、被験者は、イラスト入りの透明シートを複数与えられ、順番に意味はないと説明された。それぞれのイラストはある場面の一部を描いたもので、すべてのシートを重ねると、重ねる順番に関係なく同じ絵になる。それでも被験者は、目的語を動詞の前に置いた。

「この結果は、言語は思考から独立しているということをほとんど証明している」とGoldin-Meadow氏は言う。

こうした予想外の結果が何を意味するのかは、まだはっきりしない。SVO型言語を話す人は、思考を人間の直観にやや反する言語パターンに変えるので、認識面でわずかなストレスを常に感じているのかもしれない。そうだとしても、そのストレスは検知できないくらい小さいだろう、とGoldin-Meadow氏は言う。だが、こうした認識面での負担は、神経障害のある子どもたちや、SVO型言語を学習するのに苦労している子どもたちの場合にはもっと顕著になる可能性がある。

「証拠は全くないが、問題を抱えている子どもたちを調べるのが第一歩だろう。そうした子どもたちは違った考え方をしていることを理解し、翻訳術と同じような思考法を彼らにマスターさせることもできるかもしれない」とGoldin-Meadow氏は語った。

『PNAS』の「出来事の自然な順番:異なる言語を話す人たちは、言語を使わずにどのように出来事を表現するか」を参照した。

 http://www.pnas.org/content/105/27/9163
 世界諸言語の地理的・系統的語順分布とその変遷でも人類原初の語順はSOV型ではなかったかと示唆されていた。
 英語だって中国語だってもともと今の語順だったわけでなし。
 統語論の分野でも、デフォルトの語順をめぐる議論があったと記憶している。