言語学者ができること

ウイルタ語を守れ ユジノで教科書 池上北大名誉教授が編集(04/15 08:10)

できたての教科書を手にうれしそうなウイルタ民族の子供=14日、ユジノサハリンスク(津野慶撮影)

 【ユジノサハリンスク14日津野慶】消滅の危機にさらされているロシア・サハリン州の先住少数民族ウイルタの言語を守ろうと、池上二良(いけがみじろう)北大名誉教授(87)が編集した教科書が十四日、ユジノサハリンスクで出版された。

 教科書名は「ウイルタ語を話しましょう」。文字のないウイルタ語を表記するため、池上さんが考案したロシア文字によるアルファベットの学習から始まり、簡単な文章まで絵を見ながら楽しく勉強できる。A4判カラー印刷で本文百七ページ。

 この日、ユジノサハリンスク市内で行われた記念式典には、高齢の池上さんの代わりに弟子の津曲敏郎(つまがりとしろう)・北大大学院教授(言語学)が出席し「これを新たな出発点にしたい」と述べ、ウイルタ語の保護に意欲を示した。出席したウイルタ民族の人たちからは「きょうは記念すべき日だ」と喜ぶ声が上がった。

 津曲教授によると、ウイルタ民族は北サハリンを中心に約三百五十人。大半はロシア語を話し、ウイルタ語を話せるのは今や十六人にすぎないという。

 教科書は十年ほど前に編集されたが、資金不足で出版に至らなかった。今回、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を進めるサハリンエナジー社(ユジノ)が費用を負担し、サハリン州政府が五百部を出版した。主に学校や研究機関に配る。

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/education/87236.html